グレンドンによれば、人々は政治よりも裁判を頼るようになり、裁判のあり方も法律家の意識も変わった。グレンドンは訴訟の極端な増加を、1960年代の予期せぬ副産物と信じている。彼女の説によれば、60年代には、人々はほとんど全ての社会悪と不正義を改めるために裁判所を頼り始め、これは今やお金のかかる習慣となった。この習慣は、変化を生み出すための伝統的だが緩慢な方法(政治的プロセスもその方法の一つ)の衰退を伴う。つまり、人々は投票する代わりに互いを訴える。1960年代以降訴訟が急増したので、法律家という職業自体が変わってしまった。もはや交渉と和解に重きを置かないし、訴訟が避けられるかどうかで成功を測らない。権利と闘争が強調され、成功は裁判でどれくらい大勝したかで測られる。真面目な学会でさえも、ヒーローはもはや法人の顧問弁護士ではなく、法廷弁護士だ。勝算のある訴訟で勝利を得るより、勝ち目のない訴訟で勝利する方がずっと有名になる。ハーバードはアラン・ダーショウィッツ(AlanDershowitz)を誇りにしている。訴訟に勝てば、医療費と失った収入を埋め合わせることができるし(経済的損害賠償金)、時には精神的損害賠償金も受けとれるので、人々は盛んに訴訟を起こした。メーカーを懲らしめるための懲罰的損害賠償金は頻度は低いが、高額なので世間の注目を大いに浴びるグレンドン説の説得力はさておき、アメリカ人が病気や怪我をすると法律に頼るのにはもっともな理由もある。先進国家が拘束を受けないフリーマーケットに最も専心した時、その国は過酷な場所となり得る。大企業は強大でしばしば無慈悲であるし、どんな種類の危害であれ、それを受けた者にとって、転落防止の安全ネットは悪名高いほど貧弱だ。特に医薬ケアは高額で、それを必要とする全ての大に保障されているわけでは決してない。そこで権利侵害を受けたり病気になった人々は、それを他人のせいにして賠償金を取り立てようとやっきになる。訴訟で成功することが、医療費と失った収入をまかなうための唯一の方法かも知れない(しばしば経済的損害賠償金と呼ばれる)。時として精神的損害賠償金も裁定されるが、これは経済的損害賠償金と少なくとも同程度の額だろう。
[参考]
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