国内の3つの学会誌から、多文化的環境のなかで生きる幼児を対象とした研究を中心に取り上げて検討した。その結果、次のような2つの傾向をみてとることができる。ひとつは、多文化的環境を生きる幼児の発達過程は、発達心理学の領域よりも保育学や乳幼児教育学の領域で、より多く検討されてきたことである。幼児の発達における文化・多文化への関心は、現実を生きる幼児に密着した研究を志向する学問分野で育まれてきたといえるのかもしれない。もうひとつは、研究の大きな流れとして、「質問紙調査を中心とした実態把握から観察データにもとづく実証的研究へ」という動きがみられることである。具体的にいえば、(1)外国人幼児への発達支援の必要性から、1990年代の初めにアンケート調査による実態把握や実践報告が出されるようになった、(2)やがて1990年代半ば以降から、研究数は少ないながらも、系統的に収集した観察データにもとづいた実証的研究が行われるようになった、(3)実証的研究が蓄積されるにつれ、研究を理論的にも方法論的にも精緻化させようとする志向がみられるようになった、ことなどを読みとることができる。そして、理論化の方向として、「個体主義的発達観から関係論的発達観へ」「アメリカ型多文化教育の応用から日本型多文化教育の醸成へ」とでも呼べるような緩やかな動きがあるように思われる。
[参考サイト]
保育士について
http://www.seitoku.jp/kttcsu/