インドで最後に滞在したのはパンジャブ州だった。ヒンドゥー教徒が多数派を占めるインドでは例外的にシーク教徒の多いこの州は、ただでさえ人々がしっかりしているように映る。寺院は電飾に輝き、朝の道はきれいに掃除され、ゴミひとつ落ちていなかった。流行りの言葉を遣えば、それはシーク教徒の人々の品格のようなものだった。しかしパキスタンは金さえあれば、なんでも許されてしまいそうな雰囲気に包まれ、道には行き場のないゴミが散らかっていた。
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旅人はそんな風景を敏感に察知してしまうのである。僕らはラホールからクエッタをめざしていた。ラホールで一日休もうか……とも思っていた。インドのジャランダー、そしてラホールと連泊すれば、インドのバスにやられた脳を癒すことができるような気がしたのだ。しかし、車がラホールの街に入り、その雑踏に巻き込まれたとき、カメラマンやH君の瞳から希望の色が失われていってしまった。