金額の話が出る前に、先に、店長からこの支店で施術をした女性たちのカルテを見せてもらった。回数ごとに採寸がしてあって、そのときの写真も張りつけてあった。何回でどのくらい痩身したのか、写真を比較すれば痩身の効果が一目で分かる。中には初回の施術で太ももが5センチも痩せた人がいて、39センチになっていた。カルテは広告とは違って、写真とサイズの記録などが書かれているから、紛れもなくこの支店に通って痩身したもので、インチキではないのだと思った。そういう確実に痩せるという証拠を見せられ、心はもう動いてしまったというのに、よく分からないシステムと金額が私を思い留まらせていた。おそらくはじめて入会する人たちは、皆このシステムが分からないのではないかと思う。説明されても、頭がこんがらかり、整理するだけで瞬きの数が多くなってくる。このまま入会するとしたら、あのカルテを信じてどういう施術をしていくのかも分からないまま、この店長に「お任せします」という状態になるだろう。しかも説明を理解できないのだから、勧められたコースを取らざるを得ない。やはりはじめて入会する人は、システムがどうであろうと「痩せられる」というサロン側の保証があれば、どういう施術をしたとしても決めてしまうのではないだろうか。つまり入会する決め手は「効果があるのか」の一点で、施術の内容は二の次だということだ。「まだ決められないので、一応、考えさせてほしいんですが」「ローンを組めば、月々2万円くらいからでもありますよ」「ローン……」「そう、ローン。大学生のお客さんなんかもね、結構みえていますけど、月々2万円くらいのローンを組んでいますよ。月々2万円で、今までの苦労から解放されるのだから、それを考えたら大したことないと思うわよ」「はあ」私は店長の口から繰り返される、「月々2万円で理想の体形を手に入れる」というセリフを黙って聞いていた。それからやはり考えると言って、私は店長にエレベーターの前まで見送られながらエステサロンから去った。そのとき彼女は、こちらが恐縮してしまうほど頭を深々と下げ、「今日は本当にありがとうございました。またお待ちしています!」と元気よく言った。
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